古来より鎌倉は三方を山に囲まれ防御には非常に優れた土地。しかし物資や人の往来に関しては不便な面がありました
そこで山の稜線を切り開いて道(切通し)がつくられました
鎌倉の主な切通しには七ケ所あり、これを「鎌倉七切通し」と呼んでいます
このうち「巨福呂坂(こぶくろざか)切通し」と「極楽坂切通し」は舗装され車が頻繁に往来しており、当時の面影をみることはできません
しかしその他の切通しはいまだに古の風情が残されており、魅力ある観光スポットになっています。
極楽寺切通しを除く六ケ所の切通しは「国指定史跡」
大仏坂切通し
長谷から常盤を経て藤沢方面に抜ける道で、狭く急峻な古道がよく残されています
(切通しの東側入口から入る場合)JR鎌倉駅から京急バス「梶原」「鎌倉山」行などに乗車し、10分で大仏坂バス停下車。江ノ島電鉄「長谷寺」駅から歩く場合は約12分
鎌倉大仏で知られる”高徳院”の近くにある切通し。入口は大変わかりにくい場所にあります(高徳院から向かうと)大仏坂トンネル手前、右側にある階段を上って行きます


「源氏山公園・銭洗弁財天」へとの分岐点で大仏坂切通方面の指標に沿って進みます

この道は記録が少なく明治時代に掘り下げ工事が行われているので、中世の状態がどれほど残されているのかは、よく分かっていません
それでも両側には苔むした崖がせまり、古の風情が感じられます
常盤側には「やぐら」がいくつかあり、その中には五輪塔が置かれてあります


常盤側の出入口は「火の見下」バス停から民家の間の路地を入って行きます。こちらも分かりにくいので注意が必要
やぐら・・・鎌倉周辺で鎌倉時代中期から室町時代前半にかけて作られた納骨窟・供養堂。土地に限りがあった鎌倉では崖を削ってやぐらを作り”お墓”のかわりとしました。
朝夷奈(あさいな)切通し
横浜市金沢区との境に位置しています。JR鎌倉駅から京急バス「金沢八景駅」「太刀洗」行に乗車し、12分で十二所(じゅうにそ)神社下車。徒歩10分
七つの切通しのなかで一番中世の雰囲気を残していて、私の一番好きな切通しです
太刀洗川(たちあらいがわ)に沿って道が続きます
入口付近にある「三郎の滝」。小ぶりの滝ですが、水量の多いときは迫力があります
朝夷奈 切通しには”朝夷奈 三郎義秀”が一夜で切り開いたという伝説が残り、この滝の名もその伝説に由来します

道には川のように水が流れ出ています。なんとも言えない野趣あふれる光景
贅沢にこの空間を独り占めです。滑りやすく危険で靴も汚れますが気分は高揚してきます

岩に群生する「苔(こけ)とシダ」緑色の競演が鮮やか

切通しの上には外敵を向い討つための平場が存在します

名越(なごえ)の切通し
鎌倉南東部から逗子方面に抜ける道。名越の名はこの道が急峻で「難越(なこし)」と呼ばれていたことから由来
(逗子、亀ヶ岡団地側から入る場合)JR鎌倉駅から京急バス「緑ヶ丘入口行き」に乗車し、10分で終点下車。徒歩8分
鎌倉大町口側からは鎌倉駅から徒歩約30分。私は鎌倉側から入りました

鎌倉側入口から入ってすぐきつい上りになり、道には巨石が行く手を遮っています

少し歩くと左側に「まんだら堂やぐら群」の標識。春と秋の期間限定で一般公開されています。詳細は鎌倉観光公式サイトメニュ-の”祭・イベント”から確認して下さい
150以上のやぐらが存在する鎌倉でも有数のやぐら群。保存状態がよく大変貴重な遺跡です。 やぐらのなかには五輪塔が並んでいます

まんだら堂の入口に戻り、逗子側に進んでいくと「第一切通し」が見えてきます
平場がいい状態で残されており、”これぞ切通し”といえる場所です


化粧坂(けわいざか)切通し
鎌倉から葛原ケ原を通って武蔵方面に抜ける道。源氏山公園の一角にある、わずか80mほどの坂道です
この坂道は”新田義貞”の鎌倉攻めの激戦地となった場所。4日たっても突破できませんでした
JR鎌倉駅から徒歩35分。海蔵寺に向かう道の途中から左側に入る路地を行きます

すり減った鎌倉石の石段

化粧坂切通しは紅葉の名所としても知られています
近くには鎌倉でも人気の観光地「銭洗弁財天」があります。こちらは多くの観光客で込み合っていました


亀ヶ谷坂(かめがやつざか)切通し
鎌倉の扇ケ谷地区と山ノ内地区を結び、武蔵地方に通じる道。昔は現在よりもっと急な坂だったようで「建長寺にいた亀がこの坂を上ったものの、頂上まで行けず引き返した」という伝説から亀返り坂→亀ケ谷坂と言われるようになりました。
JR北鎌倉駅から徒歩10分

現在は扇ケ谷地区と山ノ内地区を結ぶ住民の生活道路として使われているようです

山ノ内側の入口にある「長寿寺」は今、鎌倉でも一番人気の紅葉スポット
